商標登録をスムーズに取得するには、予め、商標登録までの一連の流れを理解しておく必要があります。
この記事では商標登録するまでの流れや必要なものについてまとめていきますので、商標登録完了までのイメージの参考にしてくださいね。
商標登録に必要なもの
商標登録は国(特許庁)に申請を出しますので、基本的には
- 申請者の情報
- 申請する内容(ロゴやネーミングなど商標登録するもの)
- 商標を使用するサービス
- 申請登録費用
の4点が基本となります。細かい点については、これ以降に1つずつ具体的に解説していきます。
1.出願人(申請人)情報
将来の商標権者である出願人を特定するための出願人情報が必要になります。
法人の場合は、住所又は居所、法人名、代表者名が必要です。会社の登記簿謄本、印鑑は必要ではありません。
個人の場合は、住所又は居所、氏名が必要です。住民票や個人の印鑑は必要ではありません。
なお、弁理士が手続を代行する場合、委任状は必須ではありませんが、特別な手続をする事態に備えて、委任状を用意するケースがあります。このケースでは、印鑑が必要になります。
2.登録したい商標(ネーミング、マーク、ロゴなど)
登録したい商標を用意してください。商標が表示されているパンフレット、会社資料、ウェブサイトの印刷物でも大丈夫です。ネーミング等の文字商標の場合は、口頭で伝えるだけでも大丈夫です。
通常のネーミングの他に、ネーミングの省略形も使用される場合、その省略形も商標登録すべきか、検討対象になります。マークやロゴの場合、資料の他に画像データ(JPEG、PNG、ビットマップなど)もご用意ください。画像データは、商標登録の書類作成時に必要になります。
3.商標が使用される商品・サービス
商標登録では、商標登録したいマーク(ネーミング)だけではなく、“どういう用途で使うのか?”という用途が必要となります。
これから作るサービスなどは今後のビジネス展開が決まっていないケースもありますが、商標登録申請の段階では商標が使用されている又は将来使用予定のあるすべての商品・サービスをピックアップしておき、それを申請する形が理想です。
ただ、適用するサービス内容を増やしていくとその分申請費用・登録費用も高くなりますので、優先順位については弁理士などに相談し必要なものを厳選したほうが良いでしょう。
弁理士に伝える場合は、登録したい商標が今後使われる可能性のあるサービスを率直にお伝えいただければ大丈夫です。不明な部分があっても、現在把握している分だけで結構です。
事業内容に関する資料(補足)
登録予定の商標を使う予定の事業内容に関する内容を明確にすることも大切です。商標登録の申請書には商標を使用するサービス内容を指定します。
商標を使用する事業内容の選択に困った際は、弁理士に相談する方が判断しやすくなります。
弁理士に相談する際には事業内容がわかる資料、例えば定款・パンフレット・会社資料・ウェブサイトの印刷物などをご用意いただければ問題ありません。仮に資料がないばあいでも面談の際に口頭で説明いただければ十分なケースが多いのでご安心ください。
また弁理士に相談頂いた場合は、事業内容の資料に基づいて商標登録の対象となる商品・サービスを弁理士から提案することもあります。
4.商標の手続費用
商標登録の手続き費用は
- 商標取得の際
- 商標権の更新
の2つのケースで費用が発生します。
商標取得の際
まず一番最初の商標取得段階では最低でも、「出願(申請)時」と「登録時」の2回、手続費用の支払いが発生します。
費用の支払いは基本的に収入印紙を購入し、印紙での支払いとなります。またすべてのケースではありませんが、拒絶理由通知書が届き、それに対する応答手続をした場合は、別途手続費用が発生します。
商標権の更新
これに加え、商標権を取得した後は、権利を維持するための更新費用がかかります。更新のタイミングは5年と10年があり、前回の申請(更新)で商標登録期間を10年とした場合は10年後、5年とした場合は5年後に更新となります。
なお商標登録の費用は更新を継続すると減額されることはなく、基本的に登録時と同額の登録料が更新費用として必要です。
これが商標登録の費用に関する概要ですが、具体的な費用については記事の後半で説明しています。先に金額について詳細が知りたい方はこちらをクリックして先にお進みください。
商標登録の依頼の流れ
商標登録は自分ひとりでも、弁理士に依頼して申請を代行してもらうこともできます。
ここでは、弁理士に依頼する部分から流れとして書いていきますが、自分自身で申請する場合は、申請の箇所から書類を作成し自分で申請していくことになります。
全体の流れとしては以下のステップになります。
- 弁理士との打ち合わせ
- 商標登録申請
- 登録・または拒絶への対応
- 商標権の維持(更新)
STEP.1 弁理士との打ち合わせ
商標登録を専門家に代行して貰う場合は、基本的に“特許事務所”を探し、“弁理士”に依頼することになります。
弁理士に申請を依頼する際には、冒頭に記載した「商標登録に必要なもの」のうち手続き費用以外をご用意いただくことになります。
今回の商標登録の概算見積もりをもらう
まずはじめに、商標登録をするかどうかを決めるために、今回の商標登録にかかる費用の概算を把握します。
自分で手続きする場合は「申請登録費用」のみですが、弁理士に依頼する場合は「申請登録費用」+「代行費用」がかかります。
弁理士に以来知る場合は、
- 最寄りの特許事務所に出向き(または来てもらい)対面で相談する
- インターネットを通じて相談する(電話・メール・SkypeやZoomなど)
の2つのケースがあります。
どちらの場合も、登録したい商標、商標が使用される商品・サービス、事業に関する説明を送り、その内容をもとに特許事務所と相談して見積もりを出してもらいます。
商標登録の相談された特許事務所側では、提供していただいた資料等に基づいて商標登録出願の仕方(申請のタイミングや申請するサービス区分など)が提案されますので、納得できれば正式に依頼をします。
なお商標登録はサービス区分の選択が鍵になり、この区分によって費用が変わりますので見積もりの際に将来のビジネス計画があれば、それを弁理士に伝えてみてください。
商標登録では、商標登録できるかどうかの見込みを調べる“商標調査”が必要になりますが、特許事務所(弁理士)に依頼する場合、商標調査に費用が発生するケースがあります。
調査に関しては特許事務所によって様々で、無料のケースもあれば、依頼すれば通常は無料ですが依頼者の都合によって(商標登録の見込みがあるのに)キャンセルする場合は有料、など様々です。
この点について正式依頼前の見積もりできちんと確認を取り、代行費用をきちんと把握した上で依頼するようにしてください。
商標調査の結果の確認
特許事務所に依頼する場合、料金等の見積もり内容に了承したら正式に依頼し、商標調査をしてもらいます。
商標調査の結果を確認し、商標登録の見込みがあれば、正式に特許庁への申請手続を依頼します。なお、申請手続の依頼前には、「商品又は役務の区分」の数が決まりますので、正式な費用も確認します。
ご自分でリサーチする場合は、商標登録できそうだと判断した段階で正式な申請費用を計算し、特許庁への申請準備を始めます。
STEP.2 商標登録の申請
希望する商標とサービス内容を確定し、特許庁より申請様式をダウンロードし、書類を作成して商標登録申請を特許庁に提出します。
申請書類チェック
自分で申請する場合は書類ができた段階で
- 出願人情報
- 登録を受けたい商標
- 商品・サービスが希望したものか
- 誤字・区分間違いがないか
を確認します。
自分で申請を出す場合は、上記を確認したらすぐに提出して構いません。
特許事務所に申請作業を代行する場合は、申請前に書類の確認が来ますので上記の内容を確認し、前金制の場合は請求書の発行後、このタイミングで費用を支払います。書類チェック・支払い等の処理が済むと特許事務所が特許庁へ商標登録出願(申請)をします。
提出書類の受領・確認
申請書類を特許庁に提出したあとは、特許庁から審査結果の通知が来るまで待つことになります。
特許事務所に申請を依頼した場合は、正式に商標申請後、提出書類の写しが届きますので、申請した内容に間違いがないか念の為確認します。特許事務所が後金制の場合、この段階で請求書が発行されますので費用を支払います。
なお、特許事務所によっては審査結果を早く知りたい場合に早期審査(オプション・有料)を依頼することも可能ですので検討してみてください。
STEP.3 拒絶理由通知書が届いた場合
商標登録は一発で通過するケースもありますが、特許庁から登録取得を拒絶されるケースもあります。
拒絶された場合、特許庁から「拒絶通知書」という書類が届きます。その内容によっては、拒絶が解消される見込みがある消すもあります。内容をみて解消かのうか、応答手続(意見書・手続補正書の提出)の費用はどの程度かを確認し、商標取得を希望する場合は手続きを進めます。
なお自分で申請を出している場合は、上記の手続きを自分自身で行いますが、特許事務所に依頼している場合は特許事務所の弁理士が「拒絶理由」についてわかりやすくコメント・解説してくれます。ですのでそれを元に、対応するかどうか、具体的にどう対応するかなど方法を相談します。
なおこの手続きを“応答手続”といいますが、特許事務所に応答手続を依頼すると費用が別途発生するケースが通常です。ですので、対応の前に費用についての話があるますので、了承したら応答手続の直前又は直後に発行された請求書に従い費用を支払います。
STEP.4 登録査定・商標登録(商標権の設定登録)
特許庁から登録査定が届いた場合、登録料を納付することで、商標登録がされます。
この支払が完了した時点で、商標登録ができたことになり、後日商標登録証が届きます。
これ以降は、申請した期間(5年または10年)ごとに原則登録料と同額の更新料を支払うことで商標権の維持ができます。
商標登録にかかる費用について
商標登録にかかる費用について、国への申請費用と弁理士等に依頼した際の費用をぞれぞれ時系列で説明していきます。
商標出願時にかかる費用
弁理士手数料と印紙代がかかります。
弁理士手数料は、区分数(商品・サービスのグループの数)、特許事務所の料金体系によって異なります。日本弁理士会による過去のアンケートによると、1区分3~8万円程度です。
印紙代は、3,400円+(区分数×8,600円)です。
商標登録時にかかる費用
弁理士手数料と印紙代がかかります。
弁理士手数料は、区分数、特許事務所の料金体系によって異なります。日本弁理士会による過去のアンケートによると、1区分3万円程度です。
印紙代は、下記の通りです。
- 登録料 5年分の場合:16,400円×区分数
- 登録料10年分の場合:28,200円×区分数
拒絶理由通知書へ対応する際の費用
拒絶理由通知書に対してどんな手続をするかによって、手続費用がかわります。日本弁理士会による過去のアンケートによると、次の通りです。
- 手続補正書を提出する場合:無料~6万円程度
- 意見書を提出する場合 :3~8万円程度
- 両方を提出する場合 :3~14万円程度
商標更新時にかかる費用
弁理士手数料と印紙代がかかります。
弁理士手数料は、区分数、特許事務所の料金体系によって異なります。日本弁理士会による過去のアンケートによると、1区分3万円程度です。
印紙代は、下記の通りです。
- 登録料 5年分の場合:22,600円×区分数
- 登録料10年分の場合:38,800円×区分数
商標登録までに必要な工程・期間
弁理士による商標調査・書類作成にかかる日数
依頼から3~7日程度かかります。
商標登録出願(申請)にかかる日数
通常審査の場合、審査期間(登録査定又は拒絶理由通知が届くまで)は約1年です。但し、早期審査を申請すれば、審査期間は3ヶ月程度に短縮できます。
拒絶理由通知(一部の案件)が届くまでにかかる期間
商標登録出願から約1年後に届きます。通常、拒絶理由通知書が届いた日から40日以内に、拒絶理由を解消するための応答手続を行います。
登録査定・商標登録の期間
拒絶理由が発見されない場合又は拒絶理由が解消された場合、特許庁から登録査定が届きます。登録査定後、登録料を納付することで、商標登録がされます。登録料は、5年分又は10年分を選択できます。いずれを選択した場合でも、後日、商標登録の更新が可能です。
登録証の送付が送られてくるまでの日数
登録料納付から1ヶ月ほどで、特許庁から登録証が届きます。
商標登録出願~登録完了にかかる期間と申請のタイミング
商標登録は「早い者勝ち」です。たとえ、自社のオリジナル商標を長年使っていても、他社がそのオリジナル商標について商標登録を取ってしまうこともあります。このため、商標登録のメリット・デメリットを比較した上で、メリットの方が大きいのであれば、「できるだけ早く」商標登録出願をすべきでしょう。
具体的には、登録したい商標の確定後、商品発表や商品販売等の商標を公開する前までに、出願するのがベストです。商標の公開後は、商標ブローカーに先取りされないためにも、なるべく早く出願すべきです。また、商標の公開予定前までに商標登録を取りたい場合は、商標の公開予定日の3ヶ月前までに、出願及び早期審査申請を済ませておくとよいです。
商標登録の優先度
商標登録はビジネスを安心して行うためにたいせなことですが、ビジネスのタイミングにより優先度が変わります。
ここではよくある相談を元に、商標登録の優先度についてアドバイスをまとめます。
商標登録が予定日に間に合いそうにない!
商標登録がスケジュール通りに行かない場合は、とにかく商標登録出願と同日又はその後なるべく早く、早期審査を申請します。商標登録を早く取得するには、早期審査の申請しかありません。
今すぐ商標登録しないとまずい?
商標登録は今すぐ登録しないとまずいものではありませんし、タイミングを見て後日、商標登録が可能です。
ただ他人があなたの商標について、勝手に商標登録を取ってしまった場合は、先に申請したほうが優先権を取得していますのであなたがその商標を使えなくなる危険性が高まることは肝に銘じておいたほうが良いでしょう。
このため、重要なビジネスであればあるほど、なるべく早く、商標登録を取った方が良いのはいうまでもありません。
ビジネスの状況と手続費用のバランスが大事
ビジネスをスタートアップした直後は、商標寄りも目の前のビジネスに集中する必要がある場合もあります。
特に会社の商標がまだなかったり、商標があってもビジネス展開に応じて変更されたり、商標にブランド価値がほとんどない場合は、まずはビジネスに集中し、この段階で無理に商標登録出願しなくても良いケースもあります。
商標取得には手間も手続費用もかかりますので、スタートアップ直後こそ、ビジネスの状況と手続費用のバランスを考慮して、商標登録出願をするか否かを決定すべきです。
特に、ビジネスの展開に応じて、メインとなる商標が変更される可能性や、使っている商標を一部修正する可能性がある場合は、無理に商標登録出願する必要はなく時期を伺ってください。
商標登録で最も大切なこと
「商標登録を取りたい」と思っても、商標登録の取得完了までには、通常は約1年かかります。
また、商標取得の流れで最も覚えておいていただきたいのは、どれだけ使っていたかではなく「どれだけ早く商標登録の申請を出したか」で勝敗が分かれるということです。
実際に「商標登録は早い者勝ち」ということを知らずに、心痛な想いで、自分の愛着のある商標を手放した方も実際にいらっしゃいます。ビジネスの開始後何年も経ってから商標登録を取ることも可能ですが、その間に、他人があなたの商標を横取りする危険もあります。
このため、登録したい商標が確定して、手続費用の負担が大きくなければ、今すぐに、商標登録出願をすべきです。
商標取得を考えているが判断しかねる方はお気軽にご相談ください
どのような状況であっても、商標登録を取っていないのであれば、常に、自分の商標が使えなくなるリスクを抱えたままで、全く安心できません。
このようなリスクを回避するためにも、商標登録について、これまで全く弁理士に相談したことがなければ、一度ご相談されることをおすすめします。
またすでに商標登録の重要性を認識し、ご自身で商標登録を申請してみたものの、特許庁から拒絶理由通知書が届き、何をすればよいか分からない方もいるかと思います。
こういったケースも弁理士であれば、拒絶理由通知書を読むだけで、拒絶理由を解消できるか否か、どのような応答手続をすればよいかが分かります。実際に、そのような方からのご相談も受けていますのでもし当てはまる方がいらっしゃったらお気軽にご相談ください。